シリコーン雑学第3回(自動車編)
- 化学・材料
- マテリアル研究開発室
シリコーンの役割や重要性についてお届けする「シリコーン雑学」も第3回となりました。今回は、自動車の外装から電装系、駆動系、さらにはシートやエアバッグに至るまで、シリコーンがどのように活用されているかを詳しく解説します。
外装
自動車の外装には、シリコーンが多岐にわたって活用されています。例えば、ヘッドライトカバーや樹脂製ウィンドウには、シリコーンハードコーティング剤が使用されており、耐傷性と透明性の維持に貢献しています。これにより、クリアな視界と長期耐久性を両立することが可能になります。
また、ドアのウェザーストリップなどのパッキン部品には、皮膜形成系シリコーンコーティング剤が用いられています。これは特に寒冷地で効果を発揮し、凍結による固着を低減させることで、ドアの開閉がスムーズになり、冬季における快適性を向上させます。加えて、滑り性の向上によって異音の発生を抑制し、車内の静粛性にも寄与しています。これらの特性により、車両の耐久性とユーザーの快適性が向上します。
電装系
自動車の電装部品は、高温・高電圧・振動など過酷な環境下に置かれるため、シリコーンの絶縁性・耐熱性・柔軟性が重要な役割を果たします。代表的な用途として、イグニッションケーブルやスパークプラグブーツ、センサー類の保護チューブの素材として、ミラブル型シリコーンゴムが使用されています。
この素材は、高い電気絶縁性および耐熱性、柔軟性、長期耐候性に優れているため、電装系に対して長期間にわたって高い信頼性を発揮し、電装系材料には不可欠な存在となっています。
駆動系
ファンカップリング(ファンクラッチ)やビスカスカップリングといった駆動系コンポーネントでは、ジメチルシリコーンオイルが用いられています。ファンカップリングは、エンジンの回転力を冷却ファンに伝える部品で、流体を介することによりエンジン回転数の上昇に伴いファンの回転数が比例的に上がらないようにするもので、耐剪断性・耐熱性・耐圧縮性に優れたシリコーンオイルの特性が非常に適しています。
また、ビスカスカップリングも同様に液体が充填された構造であり、駆動輪が空転した際の回転差による発生する粘性抵抗で、別の車輪を駆動させるものですが、この用途にも同様の理由からシリコーンオイルの特性が非常に適しています。
シート
自動車シートの快適性や耐久性の向上にも、シリコーンが大きく関与しています。
ポリウレタンフォーム製造時には、ポリエーテル変性シリコーン整泡剤が用いられ、均一で微細な泡構造を形成することで、反発性と耐久性に優れた座り心地の良いシートが実現します。
(シリコーン整泡剤については第1回ウレタンフォーム編をご覧ください)
さらに、シート表面のコーティングにもシリコーンが活用され、撥水性や防汚性を高めることで、メンテナンス性を向上させています。特にファミリーカーやアウトドア用途の車両においては、汚れや水分の浸入を防ぐ効果が重要視されています。
加えて、シートヒーターに内蔵される電装部品の絶縁材や保護材料としても、シリコーンの耐熱性が役立っています。これにより、安全性と快適性を両立したシート設計が可能となっています。
エアバッグ
エアバッグは衝突時に展開して乗員を保護するため、展開瞬間の高温に耐えることが求められます。そのため、エアバッグにはシリコーンゴムでコーティングされたナイロン布が使用されています。このコーティングにより、耐熱性と気密性が向上し、エアバッグが確実に展開・作動することを可能にしています。
また、シリコーンは柔軟性や経年劣化に強い特性も持ち合わせており、長期保管後も高い信頼性を維持する素材として、安全技術の一翼を担っています。
ホイール
アルミダイキャストホイールの鋳造工程では、金型にシリコーン系の高性能離型剤が使用されます。特に、アルキル変性型やフェニル変性型のシリコーンは、高温下での安定性と優れた離型性を兼ね備えており、成型品の表面品質や寸法精度の確保に貢献します。
これらの離型剤は、オイルタイプやエマルションタイプとして提供され、金型からのスムーズな脱型を実現するだけでなく、表面の美観・耐久性の向上にも寄与します。
また、近年は環境負荷低減を目的とした低VOC型の離型剤や、水系エマルションへの移行も進んでおり、サステナブルな製造工程の一端を担っています。
タイヤ
近年注目されているシリカ配合タイヤ(シリカタイヤ)には、チオール系やスルフィド系のシランカップリング剤が使用されています。これらのカップリング剤は、シリカとゴムとの化学結合を促進し、変形によるエネルギーロスを減らしてタイヤの転がり抵抗を低減するとともに、耐摩耗性の向上により長寿命化に貢献します。
またシランカップリング剤の効果によってシリカを均質に分散させることにより、タイヤの路面凹凸への追随性が良くなり、ウェットグリップ性能が向上します。
このようにシランカップリング剤はタイヤの安全性と経済性の両立に大きく寄与しています。
まとめ
シリコーンは、自動車の多様な部位において、耐熱性・絶縁性・柔軟性・離型性・耐久性といった特性を活かし、安全性・快適性・環境性能の向上に大きく貢献しています。
外装や電装系だけでなく、駆動系、シート、エアバッグ、ホイール、タイヤに至るまで、その応用範囲は広く、今後ますます重要性を増していく素材です。
弊社では、自動車向けに最適なシリコーン素材を幅広く取り揃えており、ニーズに応じたソリューションをご提案しております。詳細については、ぜひ下記からお気軽にお問い合わせください。最適な材料選定を通じて、より安全で快適な自動車製品の開発をサポートいたします。
シリコーン雑学シリーズはこちら